ボロン酸触媒を用いた位置選択的アシル化反応を鍵工程とする,フラボノール配糖体天然物の全合成に関する論文が,歴史と権威のあるアメリカ化学会発行の総合論文誌である J. Org. Chem. に掲載されました。
A Unified Strategy for the Concise Total Syntheses of All Six 3′′-O-Acyl Quercitrins Based on Regioselective Acylation Catalyzed by Boronic Acid
Mari Tanikawa, Toshihiro Ishida, Yuki Nakamura, Kazuishi Makino, and Naoyuki Shimada*
J. Org. Chem. 2025, 90, 2278–2287.
大学院相関理化学専攻修士2年の石田俊宏さんと当研究室修士修了生の谷川真梨さん,博士修了生の中村優生さん が実験者として主たる貢献をした研究成果です。
嶋田研究室でこれまで独自に開発した,ルイス塩基含有芳香族ボロン酸を用いることにより,ケルシトリン誘導体(フラボノールラムノシド配糖体)が有する3つの糖質由来のヒドロキシ基のうち,中央の1つのみを高収率かつ高位置選択的にアシル化できることを見出しました。合成終盤で本触媒反応を利用することにより,共通の中間体から,異なる6つの天然物を網羅的に全合成することができました。いずれの天然物も過去に合成例はなく,それぞれの初の全合成になります。
当研究室で開発した触媒的分子変換反応が,天然物合成に有用であることを示した好例です。
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